代謝性アシドーシスを示した
       気管支喘息の1例

症例: 54歳、男性
主訴;呼吸が苦しい
現病歴:6年前より喘息発作が出現し、近医を受診していた。
数日前より感冒症状あり、風邪薬を内服していたが、喘息の
症状が次第に悪化して外来を受診した。
血圧107/78、脈拍119/分、体温35.8度、呼吸数28/分
両側肺野に喘鳴を聴取した。sPO2 82%と低下しており、
入院とした。
経過:呼吸状態が悪化し、ソリタT3 500mlプレドニン
120mg,ネオフィリン250mg,ハイドロコートン500mg
などを点滴注射するが、呼吸状態は改善せず、入院時血液
ガス値:PaO2 48.5mmHg, PaCO2 39.1mmHg, pH7.352, HCO3-
21.3mEq/lであったが、22:13 PaO2 58.4mmHg, PaCO2
38.1, pH 7.179*, HCO3-13.6 と著しい代謝性アシドーシスを
認めた。メイロン250ml点滴注射をおこない、PaO2 48.2mm
Hg, PaCO2 37.4, pH 7.337, HCO3- 19.6mEq/lとアシドーシス
は改善した。呼吸状態は、次第に悪化するので、CO2上昇は
認めないが、挿管し人工呼吸管理を開始した。
 3:30血液ガス値;PaO2 89.1mmHg, PaCO2 68.1mmHg,
pH 7.122#, HCO3- 21.3 mEq/lと呼吸性アシドーシスを呈して
おり、レスピレータの条件を呼吸数15→20/分、1回換気量
0.45→0.5Lと増加することにより、血液ガス値は改善した。
以後、ステロイド点滴注射、β-刺激剤吸入、ボスミン皮下
注なども併用し、22日には呼吸状態も改善し抜管した。

 血液ガス経過表:
 
19日 
1)
2)3)20日 
4)
5)6)7)8)21日 
9)
22日 
10)
18:0022:1323:171:562:253:304:1611:2112:208:39
O2RARARA2 L/min40%50%50%50%30%RA
呼吸数1515202015
TV0.45 L0.45 L0.5 L0.5 L0.5 L
PaO248.558.448.263.896.289.1161.8196.855.562.2
PaCO239.138.137.434.445.668.150.042.040.439.7
pH7.3527.179*7.3377.3377.2627.122#7.2347.4407.4787.467
HCO3-21.313.619.618.020.021.320.428.329.928.6
 

 [PaCO2--HCO3-]diagram

縦軸:[HCO3-] 横軸:[PaCO2]

12:metabolic acidosis    13:metabolic acidosis+respiratoryacidos


コメント:
 この患者さんは、喘息重積状態で入院したと考える。
入院後より、呼吸状態は次第に悪化し、血液ガスの値を
みると、22:13の時点でpH7.179と著しい代謝性アシド-
シスになっている。通常は、喘息重積状態では炭酸ガス
が蓄積し呼吸性アシドーシスとなるのが予測される。
しかしこの患者さんでは著しい代謝性アシドーシスを
認めた。この原因は、不明であるが、おそらく呼吸筋
疲労のために乳酸性アシドーシスとなったためと考え
られる。メイロン250ml点滴注射を行なうことにより、
改善している。この酸塩基平衡の乱れは生体にとって
重要であり、これは早急に改善しないと心筋収縮力の
低下による血圧低下、腎臓機能低下による尿量減少が
生じたと考えられる。最近はパルスオキシメータによる
sPO2測定が容易に施行できるのでpH値を測定する
頻度が減っている。血液ガス測定は喘息発作時の検査と
して重要である。
 2度めのアシドーシスは、レスピレータの設定不具合に
よる呼吸性アシドーシスである。

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