気管支動脈瘤からの出血と考える肺出血の1例

症例:74歳、男性
主訴:血痰
現病歴:以前より、高血圧症で外来に通院中であったが、これまで血痰を認めた
ことはない。 脳梗塞の既往歴があり、パナルジンを内服している。
6月11日より咳、喉に骨がつまった感じ、血痰があり、6月14日外来を受診した。
胸部レントゲン写真で両肺野に浸潤陰影を認め、精密検査の目的で、徳山医師会
病院に入院した。

入院時現症:血圧 150/86,脈拍 80/分、体温 36.4°C、
胸部聴診で
両側背部(右>左)にラ音を聴取した。腹部には異常所見なし。
血液ガス分析:(
空気吸入) PaO2 57.4mmHg,PaCO2 41.7mmHg,
pH 7.407, WBC 10400,Hgb 12.2g/dl,Hct 34.3%,CRP 0.5
mg
/dl,ESR 35mm/1h, CH50 49.6U/ml, MPO−ANCA 10未満

胸部レントゲン写真:
両下肺野に浸潤陰影を認める。

胸部CT:

経過:
毎日、血痰があり、畜痰では1日量30〜50gの血痰を認めた。胸部レントゲン写真、
胸部CTでは両側肺野に陰影があり、血管炎による肺胞出血の可能性も考えたが、
特発性気管支出血の可能性が高いと考えて気管支鏡を施行した。

第一回気管支鏡(6月16日):
気管から右主気管支に多量の血塊があり、右中葉入口部にも新鮮血の付着がある。
左主気管支にも血液の付着がある。

第2回気管支鏡(6月20日):
気管から右主気管支〜中間管〜下葉枝にも血液の付着をみとめるが新鮮血は
認めない。

第3回気管支鏡(6月26日):
気管内に凝固した古い血塊を認める。右主気管支には新しい血液は認めない。
左主気管支から、左上葉枝さらに左下葉枝を観察するとB6入口部に半球状の隆起が
あり、気管支動脈瘤と診断した。周囲に血液の付着はあるが、現在出血は止まって
おり、経過観察とした。

気管支鏡写真:

患者さんの血痰量は次第に改善し、胸部レントゲン写真所見も改善したので退院とした。

コメント:
喀血の原因としては、種々の疾患が考えられるが、原因が不明なこともあり、この場合は
特発性肺出血と診断される。今回、高血圧で通院中の患者さんが、喀血を生じ、胸部X線
写真、胸部CTで異常所見を認め、血液ガス酸素分圧の低下も認めた。
3回目の気管支鏡検査で、左B6入口部に半球状の隆起病変を認め、気管支動脈瘤と
診断した。もちろん、気管支動脈造影を施行しておらず、病理学的にも確定診断が
できていないので、確定診断ではないが、気管支鏡所見から診断している。

気管支動脈瘤からの肺出血は、治療として気管支動脈塞栓術、肺葉切除術が施行され
ることが多いが、今回は経過観察で止血剤の点滴注射で肺出血は治癒した。
気管支動脈瘤からの出血にもいろいるなものがあり、経過観察でも治癒する場合が
あることを報告した。特発性肺出血と診断されている病態は、これに相当すると考える。

喀血の原因の精査目的で気管支検査を行った。一回の検査では診断がつかず、3回目に
気管支動脈瘤と診断した。診断が確定するまで、気管支鏡検査をくりかえすことが必要
であると考える。