急性NO2ガス中毒の1例

症例:37歳、男性
主訴:咳、血痰
現病歴:10月13日午後1時ごろタンク内で防錆剤
塗布作業中にマスクがはずれたため、5分間ガスを
吸入した。翌日14日午後5時頃より、咳がでて
呼吸も悪くなり、血痰も出現したため受診し、医師会
病院に入院した。
入院時現症:
血圧119/79、脈拍88/分、体温38.2C
胸部聴診:両肺野にsmall~medium  size  rales, wheezing
(+)
血液ガス:PaO2 48.4mmHg,  PaCO2  43.7mmHg,
pH  7.423,  HCO3- 28.0
血液データ:白血球15900、赤沈20mm/45mm,  CRP
4.6mg/dl

 胸部X線写真 :

 胸部CT

経過:プレドニン30mg内服治療および感染を考えて
抗生剤(カルベニン)点滴注射を行なった。
発熱は翌日には改善し、3日後の胸部X線写真では
肺野陰影の改善傾向を認めた。

コメント:
この症例は、現病歴より急性NO2ガス中毒と診断
できるが、胸部X線写真、CTのみを呈示された場合
には診断に苦慮すると考えられる。防錆剤(ラスノン
WELL-M:硝酸13.5%、フッ化水素酸4.5%配合)を吸
入24時間後より、発熱、咳、血痰が出現した。
高濃度の硝酸ガスを吸入すると、水に溶けにくい
性質のため、通過時間の短い上気道には刺激が少なく
、接触時間が長く、より湿度の高い下気道や肺胞が
障害を受ける。胸部X線、CT検査では肺水腫と診断
できる。硝酸ガスに吸入により、肺胞、肺毛細血管が
傷害され、肺水腫が出現したと考えられる。
経過は良好で、数日のうちに臨床症状、胸部X線写真
とも改善した。

参考文献;
嶋津 芳典、小幡 八郎
ステンレス防錆剤塗布作業により発症した急性NO2ガス中毒
の4例
日胸疾会誌34:1145〜1149、1996

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