模様(薄紫)

禁煙について

禁煙のすすめ  

          『禁煙テキスト』
         千治松呼吸器循環器内科
                        千治松 洋一
概要

1)タバコが喫いにくくなった

 以前と比べて随分と、タバコが喫いにくくなりませんか?間接喫煙(受動喫 煙)による健康被害が知られるようになって、周囲の人の目が厳しくなっているからです。新幹線の禁煙車両も増加してきました。
 それでも日本はまだまだ喫煙天国で成人男性の6割弱が喫煙しています。


 厚生省のタバコ行動計画検討会報告書によれば、タバコ対策の具体案として
(1)防煙対策;未成年者の喫煙を防止
(2)分煙対策:公共の場、職場における受動喫煙を排除
(3)禁煙サポート;禁煙希望者に対するサポート
  の3本柱を挙げています。
あなたも禁煙にチャレンジしてみましょう。

2)タバコは健康に悪い
タバコは血圧を上昇させたり、末梢血管を収縮して循環障害を起こす
タバコは冠動脈(心臓の血管)を収縮させ狭心症や心筋梗塞を誘発する
タバコは動脈硬化を促進する
タバコは咳や痰を増やす
タバコは慢性気管支炎や肺気腫を起こす
タバコは朝のむかつきを起こす
タバコは胃・十二指腸潰瘍を起こす
タバコは味覚を麻痺させ食欲を減弱する

肺癌を高率に発生します
喉頭癌、舌癌、食道癌、膀胱癌も増加
妊娠中の喫煙は胎児の発育不良をきたす
幼児の喘息様気管支炎を増やす



3)タバコは止められる
 意志が弱くてタバコが止めれないと嘆く喫煙者がいますが、実はそうではありません。ニコチンの禁断症状のために止めれないのです。これをを克服する決断と勇気が必要です。そしてタバコを喫わない習慣を身につけることです。

4)タバコ依存度(ファーガッストローム)

1.起床後何分後に喫煙(30分以内1点)
2.禁煙の場所で困難を感じる(はい1点)
3.1日で最も充実した一本は(朝の1本は1点)
4.1日本数(16ー25で1点、26本以上2点)
5.午前中に多く喫う(はいで1点)
6.病気の時でも喫う(はいで1点)
7.ニコチンの量(中濃度1点、高濃度2点)
8.深く吸いますか(ときどき1点、いつも2点)

*4ー6点中等度依存、7点以上高度依存

5)ニコチンの禁断症状
 ニコチンの禁断症状はタバコを止めて数時間して出現し2、3日がピークで、1週間程度持続します。2週間禁煙出来れば、禁断症状はずっと軽減して、それほど苦痛でなくなるはずです。

アメリカ精神医学会の診断基準
 ニコチンの突然の中止または減量に続いて、24時間以内に以下の7徴候の
うち、少なくとも4徴候が起こる
 1)ニコチンへの渇望
 2)易刺激性、欲求不満、または怒り
 3)不安
 4)集中困難
 5)落ちつきのなさ
 6)徐脈
 7)食欲増加、体重増加




6)タバコ止める方法

  1)タバコを止める日を決める

  2)タバコと灰皿を捨てる

  3)家族と職場に禁煙を宣言する

  4)いさぎよくきっぱりやめる

  5)タバコを吸いたくなったら何か別の事 で気を紛らわす
   冷たい水をのむ
   深呼吸する
   散歩する
   体操する

7)禁煙を続けるには
   1)禁煙して良かったこと?を思い出してみましょう。

   2)代わりに健康に良いことをはじめましょう(散歩、ジョギング、 スポーツ)

   3)周囲の人(家族、同僚)の暖かい支えがありましたか、あなたの禁 煙を喜んでくれる人が必ず居るはづです

   4)酒の席にはご用心:他の人がおいしそうに喫っているのを見ている のはつらいものです、アルコールで理性が麻痺している時は要注意 近寄らない。

   5)1本くらい大丈夫で喫煙を再開したら元のもくあみです。

 タバコの害が疫学的、科学的に証明されてきたのに伴い、タバコは嗜好の範 疇をはるかに超える重大な害を持つ中毒性の薬物と考えられるようになってき ました。WHOは、「タバコは人類の健康において、人類が回避しうる最大の疫 病である」と明言し、先進諸国では病気のもとを絶つ一次予防対策の一環とし て、積極的な喫煙対策が行われてきています。
 ところが日本では、喫煙は依然として単なる嗜好品のひとつと捉えられ、「国 によってタバコ産業の健全な発展をはかること」を定めた「たばこ事業法」で 存在します。そして、「あなたの健康をそこなうおそれがありますので、吸いす ぎに注意しましょう」という、曖昧で不十分な警告表示のままタバコが売られています。
 
 成人病を生活習慣病と呼ぶことで、病気の原因を国民になすり付ける前に、 積極的な予防対策を打ち立てるべきなのに、政府は最大の原因であるタバコ について根本的対策に踏み切らず、タバコ産業と癒着しその発展を容認しています。
 
 一九八九年のアメリカの調査では、交通事故によって死亡した人は、国民百 万人当り、交通事故の死者百八十七名ですが、喫煙による死者は七千名となんと三十七・四倍です。大気汚染による死者六名に対して、受動喫煙による死者は十九名ですから、日頃私達が問題にしている他の危険因子と、比べ物にならないくらいタバコの影響は大きく、また逆に言えば、いかにタバコの害が過小評価されているかが解ります。医療従事者や医師にも、喫煙の害の大きさが意外に認識されておらず、医師の喫煙率を欧米では五%前後に激減したのに、日本では依然として三十%前後と、ようやく欧米の一般男性並みです。
 国民の医療費の自己負担を増やすことは、重症化するまで、患者さんに受診 を我慢させることになり、そのことはかえって医療費を増大させることにつながるということが指摘されています。WHOでは各種疾病の原因として最も重大な、タバコの煙の無い社会を作ることを提言しています。国内的にも、予防医学に力を入れること、根本的な喫煙対策こそ、大幅な医療費削減につながると考えられます。

8)CO(一酸化炭素)分析
 タバコの煙の中の一酸化炭素は、吸入されると血流ないで酸素と完全に競合し、COHbとなります。 一酸化炭素は血流内に24時間くらい残っており、 呼気CO濃度を測定することにより喫煙の程度を推測できます。




CO分析器で呼気ガスの分析


9)禁煙で生活の質向上

 タバコを吸っている人にはいろいろなタイプの人がいます。「誰に何といわれようと、死んでもタバコは絶対やめないぞ」という硬い意志を持った方はむしろ少数派。六十%から八十%の人は実はやめたいと思っています。でも、正確な情報を持たないために、やめる動機が弱かったり、止める方法がわからなかったりして、実行に移せないままずるずると吸い続けています。
 
 ご自身に起きている困った症状が、タバコを止めることによって、良くなることに気付いておられず、「タバコはストレス解消だ。自分にとってはなくてはならないものだ」とい幻想をいだいておられる患者さんがあります。大事な家族のために、お金を貯めて有意義に利用するために、もっと快適に過ごすために、動機は何でも良いのですが、大切なのは、禁煙は決して長生きのための禁欲的な味気ない我慢を強いるものでなく、生活の質そのものを向上させるために、役立つものであることです。

10)まさに百害あって一利なし

 狭心症、心筋梗塞、高血圧などの血管の病気、胃潰瘍十二指腸潰瘍、脳卒中、喘息などの呼吸器疾患、がん、糖尿病など、喫煙関連疾患の患者さんに、喫煙が病気の原因や増悪因子になっていたことを知っていただくのは大切です。

*子供の喘息やアトピー
 親が喫煙者の場合、子供の喘息は三倍になると報告があります。タバコ一本の煙に含まれる浮遊粉塵は、ドラム缶五百個分の空気を汚しますから、家や自家用車の中で煙に暴露される家族は、ひとたまりもありません(もちろん職場の同僚にも大きな影響があります)。

*妊娠した女性とその同居者
 妊娠中の母の喫煙や同居者の喫煙が胎児の死亡や発育不全などと関係します。

*ガンの患者さんのご家族
 同居する家族の喫煙は受動喫煙による肺ガンを2倍に増加させます。



*美容が気になる女性
 肌の血流不足から、深いしわ、肌の老化の原因になります。歯肉や口唇に色素沈着し、顔色も悪くなり、とても老けて見えるようになります。喫煙は美容の大敵です。

*肩こり
 血行不良のため、肩こりも増悪します。

*更年期障葺や骨組憲症の女性
 喫煙は骨や歯をもろくし、更年期の症状を重くします。

*歯周病、虫歯、歯槽膿漏
 喫煙は煙の最初の通り道である口腔内のさまざまな疾患の原因となります。歯石沈着や歯肉の繊維化を促進し、歯周病の原因になり、歯も抜けやすくなります。もちろん舌ガンの原因でもあります。

*スポーツマン
 スポーツを楽しみたい人には喫煙は大敵。心肺機能を悪くし、がんばりが効かなくなります。

*不眠
 喫煙はイライラの元になり、不眠を招くばかりか、眠剤の血中濃度を下げたり、効き目を減弱させたりして不眠をますます深刻にします。しかし、ご本人はニコチンが切れた離脱症状によるイライラが喫煙によって解消されるため、喫煙すると落ち着くと思いこんでいることがよくあります。

*火事や誤飲
 一番の原因はタバコです。

*経済
 一日一箱のスモーカーで、年間十万円近くタバコ代に費やしています。



11)ニコチン中毒について

 タバコを吸っている方は、多かれ少なかれ血中のニコチン濃度によって、気分が左右されるようです。
 喫煙を習慣としている人は、血中濃度が低いとイライラしたり、落ち着かなくなったり、集中力がなくなったりします。これはニコチンという中毒性の薬物の離脱症状のひとつです。逆に、ニコチン濃度が一程度上がると落ち着き、やがて気持ちが良くなるようです。しかし、ニコチンは毒ですから、濃度が高いと具合が悪くなり、さらに高いと死んでしまいます。

 タバコを一本吸うと、ニコチンは口腔の粘膜から吸収されて、三秒から四秒で脳の快中枢に達し、スモーカーに快感をもたらします。ニコチン切れで、ボーッとした頭がすっきりするような快感を伴うこともあります。タバコが切れたときの離脱症状の辛さと、タバコを吸った時に感じる快感が、禁煙を難しくしているようです。

 ニコチンが切れたときのイライラは、ニコチンと縁が切れれば感じなくなり楽になります。ニコチンの血中濃度の増減によって、イライラしたり落ち着いたり。ニコチンが切れるたびに、ニコチンを補給する喫煙行動を、一日に吸うタバコの本数分だけ繰り返してしまうのが、スモーカーの悲しい性です。タバコの場合は、致死的な副作用を伴う薬物依存症です。


悪循環を根本から断ち切ろう

 「タバコを吸うとイライラが楽になる」とスモーカーが思いこんでいるのは、条件付けの仕組みで説明がつきす。「離脱症状のつらさを喫煙が楽にしてくれた」という経験の繰り返しが、喫煙行動を強化し習慣化します。スモーカーは、イライラがニコチン切れのために起きていることを自覚しないことが多いので、「喫煙」という行動が、「イライラの解消」という報酬と結びついてしまい、「タバコを吸うと落ち着いてイライラが楽になる」という誤解に結び付き、心も体もタバコの虜となるようです。

 
しかし、ニコチンが切れたときにイライラするのは、実はもともとニコチンへの依存があるからなのです。ニコチンへの依存がなければ、イライラの種は一つ減るのです。この悪循環を完全に断ち切り、ニコチンの離脱症状から抜け出さない限り、スモーカーは、永久にニコチン切れのイライラから解放されることはありません。タバコを止めて断煙をすると、ニコチンは三日から四日で完全に体外に出ていきます。いちばん離脱症状の強いのはちょうどこの時期です。しかし、その後も離脱症状はまだしばらく続きます。喫煙行動を条件付けられた体が、完全にその条件付けを忘れるためには、さらに数週間を必要とします。

 この時期は「タバコをやめるのがこんなにつらいなら、やめるとかえってからだによくないのではないか」とさえ思えてくる辛い時期です。しかし、苦しいときは長くは続きません。十日、二週間、三週間と禁煙を続ける内に嘘のように楽になってきます。この時期をうまく過ごし、タバコから逃げきることができれば、禁煙は成功します。


13)禁煙の準備と禁煙一週間の過ごし方

 禁煙にはすっぱりやめてしまう断煙法と、徐々に減らす減煙法とがあります。禁煙を決心しつつも、タバコへの思いが断ち切れない方は「急にやめようと思うとつらいから、徐々に減らしていきたい」とおっしゃいます。これは犬の断尾にも喩えられます。かわいそうだからといって少しずつ何回も尻尾を切るより、いっぺんに必要な長さだけ切ってしまった方が残酷でないのと同じで、禁煙も断煙法の方が成功しやすいと言われています。

 ニコチンの呪縛から解放されずに我慢し続けると必ずといってよいほどリバウンドがきます。アルコール依存症の治療と同じく完全にやめてしまう方がよいようです。五十九歳以下の方や、1日四十本以下のスモーカーはやはりまず、断煙日を決めて禁煙に臨んだ方がうまくいきます。


14)断煙日の決め方

 けじめのつくお正月や、思い出のある何かの記念日でもよいです。ニコチンの離脱症状を考慮して、休みの続くストレスの少ない日を選んだり、離脱症状のピークに当たる三日から四日目をウィークエンドに当てる方法もあります。

15)禁煙準備期間

  断煙日を決めたら、その日までは禁煙の練習期間です。一日の本数を決めて吸ったり、吸える場所を限定したりして、惰性ではなく味わって吸う努力をしてみます。
 「どんな時に自分はタバコを吸いたくなるのか」をこの練習期間にしっかり、把握するようにします。そのことが本番に失敗することを防いでくれます。禁煙を決意したら、タバコを吸わない人をよく観察します。タバコを吸わない人にだってストレスはあります。
ほっと一息つくことで、リラックスする豊かな時間も持っています。「タバコがなくてはリラックスできない」、「ストレスがあるから、吸わずには居られない」と言う方は、タバコを吸わない人がどんな風に休憩を楽しみ、ストレスをやわらげているのか観察して下さい。タバコを吸わない人生を選んだ後の参考になります。

16)断煙日前日

 寝る前に最後の1服を吸い終えたら、タバコと灰皿は捨ててしまいます。ご家族や回りの人で協力してくれる人には「明日から、禁煙する」としっかり宣言します。いらいらしたり、おこりっぽくなったり、異常な行動をとったり、離脱期には回りの人のひんしゅくを買うこともしばしばです。
 しかし、これはニコチンという薬物の禁断症状で、その人の人格の問題ではありませんし、一時の辛抱ですから、回りの人には温かい心で協力してもらいましょう。
 
 前日の夜、冷蔵庫に冷たい水を冷やしておきます。禁煙した後の離脱症状のうちもっとも誘惑的なニコチン渇望の症状には、冷えた冷たい水ややけどするほど熱いお茶が有効です。夜のうちに用意しておくことがポイントです。


17)断煙日

 「朝一番の一服はおいしかったっけ」と思っても、もう吸えません。昨日用意した水を一杯飲んで、のりこえます。ニコチンの離脱症状は様々で、頭や口のしびれるような感じや眠気、手のふるえ、いらいら、集中力の低下、徐脈など人それぞれです。離脱症状のほとんどない人もいます。これらの症状が楽になるまで、ひたすらタバコから逃げましょう。
 食後は後片付けや散歩、冷たい水や熱いお茶を飲むなど、タバコ以外の方法で乗り越えるようにします。じっとしているのが一番よくありません。その人に合った方法を考えておきましょう。フリスクミントなどのシュガーレスのミントタブレットをタバコの代わりに身につけて置くことも良い方法です。コンビニやスーパーで二百円足らずで売られ、五十個粒入っています。このフリスクミントは個人差があり、むしろタバコが吸いたくなるという人もいますが、とても人気が高く、成功の助けになるすぐれものです。
 他にも、禁煙パイポやしゃぶり昆布、ガムやキャンデーなどの禁煙グッズが役に立ちます。どうしても吸いたくなったら、まず大きく深呼吸をして、一分間我慢して下さい。吸いたい波がすーっと楽になります。吸いたい気持ちを少しずつ先延ばしにして積み重ねてゆくうちに、必ず、ニコチンの呪縛から解き放たれる日がやってきます。


18)食事療法

 タバコを完全に絶って三日でニコチンは完全に体から出てゆきます。しかし、ニコチンの誘惑を知ってしまった体がその癖を忘れるためにはさらに期間を要します。ニコチンが体外に出るまでの三、四日間がもっとも離脱症状のつらい時期です。
 この時期の食事は尿へのニコチンの排泄を急速にしないため、また野菜の鎮静効果を利用するため、さらに禁煙後の肥満を防ぐ練習のためにも、「野菜や豆類中心の食事にするとよい」と言われています。三、四日の間は肉、穀物は控えめにしましょう。


19)タバコから逃げる

 タバコを吸いたくなる場所からはひたすら逃げます。禁煙席やタバコを吸わない人の隣に座り、宴会は避けます。酒の席やパチンコなどが最も多い失敗の原因となります。禁煙が定着するまで避けましょう。成功した方は、「人生が変わった」とおっしゃりとてもいい表情をなさいます。体調が良くなって頑張りがきくようになったり、今まで気になっていた咳やタン、口内炎、息切れなどの不快な症状から解放されて、イライラがなくなったりします。

 

20)禁煙二週間目以降の過ごし方

 禁煙の一番辛いのは 、ニコチンが完全に体からなくなる三日目をピークとして、一週間、十日くらいです。この時期はさまざまな禁断症状が出る人が多く、手や足がしびれるほど症状の強いこともあります。それらの症状はタバコを吸うとたちどころに良くなりますから、自分にはやはりタバコはなくてはならないものだと思いこんでしまうことすらあります。でも、これは誰にでも出ることがある症状で、乗り越えてしまえば、心配はいりません。失敗しながらでも、いつか乗り越えなければ、一生タバコの奴隷となってしまうかもしれません。
 禁煙の一番辛い時期を過ぎると、タバコを吸わないでいることがだいぶ楽になってきます。離脱症状が楽になり、タバコを吸わないでいる爽快さを楽しむ余裕が出てきます。
 しかし、この時期以降に危険なのは「一本くらいいいだろう」の誘惑です。どんなに長く禁煙しても、たった一本の誘惑から、またニコチン依存が始まってしまうことがよくあるからです。たまたま試した一本があまりおいしくなければ良いのですが、久しぶりの一服が、くらくらするくらい良かったりするともうもとのもくあみです。苦しかった一週間の苦労が水の泡なのです。一本吸いそうになったら、「自分はもう大丈夫、一本吸っても癖にはならないことを証明しよう」と危険な挑戦をしないで、「一本の誘惑から、逃げる、吸う事を先延ばしにする」ことが大切です。副流煙を吸わされないためにも、タバコを吸ている人のそばには寄らないことが無難です。山を越えたら、あとはゆっくり時間の流れに身を任せ、少しずつ吸わない時間を延ばしてゆけばよいのです。この二週間目を超えるとゴールはもうすぐ目の前です。

 タバコを吸っていると、タバコ以外の心地よい刺激を感じる感度が鈍ることがわかりました。また、喫煙者は味覚が鈍いことを実験的に証明されています。、逆に味覚が鈍らなければ、タバコの煙のようなものは吸えないのかもしれません。
 「タバコ以外のあらゆる楽しさの感覚を犠牲にしてそれでも吸うのか」という問いに対する答えは人それぞれですが、感覚が鈍ったままでは判断を誤ります。まず、だまされたと思って、タバコを休んでみませんか。タバコのない生活を、タバコ以外の楽しみがわかるようになるまで味わってから、タバコを吸っていた頃の生活と比べてみてはいかがですか。タバコを吸う生活を選ぶのはそれからでも遅くありません。


 21)分煙について

 有効な分煙とはどんな分煙なのでしょう。たばこの煙がいかに周りの空気を汚しているか、たばこを吸っている人はなかなか気がつきませんし、近くの喫煙者の煙に慣れてしまっている非喫煙者も、有効な分煙によって空気が綺麗になるまではピンとこないようです。
 一本のたばこの煙の浮遊粉塵は十五ミリグラム。ビルの環境基準では許容された浮遊粉塵は一立法メートルあたり0・一五ミリグラムですので、浮遊粉塵だけについても、環境基準を満たすためには十万リットル、つまり二百リットルのドラム缶にして五百個分の空気を必要とすることになります。しかも、たばこの中には環境基準で含まれてはいけない発ガン物質が、二百種類以上も含まれています。
 分煙の施設を作るためにはお金がかかるため、有効な分煙とは、どういうものかを考えずに対策を講じるとお互い妥協できる案で手を打とうということになりかねません。

[喫煙コーナー]
 パーテーションでしきられ、目の前で、吸われることは避けられますが、空気は連続しているので、あまり意味がありません。病棟の廊下の角に灰皿を置いて喫煙コーナーにしている所を拝見しますが、空気環境は著しく悪化します。

【集煙テーブル】
 空気清浄機に比べて、煙を直接吸い取るために煙が周りの人を直撃する事は防ぐことが出来るようです。でも、機械が吸い込んだ煙の気相成分の有害物質はやはり、十分除去できませんので、においも取り切れません。ましてやオーペンスペースに分煙テーブルを置いて使っている施設では、においがとりきれないことが指摘されています。

【院内の喫煙室 】
 一見完全分煙にかなり近いですが、単に隔離しただけでは窓や出入り口から煙が外に漏れること、中の空気が高濃度のたばこの煙で汚染されるため、喫煙者はますます危険であること、空調システムなどが共通しているときは他の部屋に気相の有害物質が循環することなどの問題点があります。これらの分煙方法は完全な分煙を達成する過渡期の対策としては有効でしかありません。


完全分煙は不可能
 本来完全な分煙はなかなか難しく、アメリカでは、病院の敷地内は完全禁煙のルールになっているそうです。また、一般の建物でも、ビルから、何メートル半径以内は禁煙という決め方をしている所もあります。きちんとした分煙対策によって喫煙者が減れば一石二鳥ですが、喫煙者の禁煙には練習が必要ですから、禁煙していただくには少し時間がかかります。また、たばこをやめる気のない喫煙者がいる場合、いますぐに空気を綺麗にしようと思ったら、掟破りがでやすい全面禁煙よりは、喫煙する行為を完全に他の場所に移し、空気の流れを考えて適切な場所に、喫煙室を作る方が実際的のようです。
 そこで、完全に空気系統が異なり、内部が陰圧になるように強力な換気扇がついた部屋を用意すること、排出された煙が院内に流れない構造になっていること、出来れば内部に集煙機を置くなどことが望まれます。院内の一室を当てるより、外のスペースに独立した部屋を作れば最適でしょう。この場合外に出た煙が院内に流れ込まないように、かぜの向きや空気の流れをよく考えて、場所を検討する必要があります。

院内は完全禁煙に
 どうしても、事情が許さない時は非喫煙者が煙に暴露されることに我慢を強いるのではなく、喫煙者に喫煙をあきらめていただく方を選択し、院内禁煙にすればよいと思います。健康増進に寄与すべき病院の中で、しかも煙に暴露されることにより、病状が悪化する患者さんもいる病院の中で、喫煙することが快適な療養環境を作ることより優先されていることがそもそも問題です。病院はたばこを吸う所ではありません。喫煙室がない場合、せめて病院にいる時は、喫煙を我慢していただくのは当然ではないでしょうか。
 これらの対策を行うとき、ネックになるのは、実は患者さんやご家族より職員の意識です。飛行機の中でさえ禁煙になる世の中ですから、喫煙する患者さんにとっても、病院にいる間の禁煙は辛いことではなくなっています。いまどきは喫煙者も病・医院が喫煙に適さない場所だとわきまえているでしょう。具合の悪い患者さんにとって煙は、健康な方と比べものにならないほど辛いものです。


22)医療関係者の意識改革を
 毎日病院の中で働く職員は今まで院内で喫煙してきたため、その既得権をなかなか放棄することができずに、対策を遅らせてしまいます。患者さんのスペースには喫煙室を作って分煙した気になっていても、職員の休憩室から、煙が患者さんの療養環境に流れていてはもとのもくあみです。しかし、職員については見て見ぬふりをしているところはありませんか。休憩時間にはくつろぎたいからという喫煙者の一言があるため、同僚の命や病院の療養環境を守ることより、職員の喫煙を確保することが優先されている病院が意外と多いのではないでしょうか。そのことは、周りの同僚や患者さんへの迷惑であるばかりでなく、吸っているご本人にとっても、ますますたばこという嗜癖に耽溺してしまうきっかけをつくることになるのではないでしょうか。



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