症例:27歳、女性
主訴:発熱、右胸痛
現病歴:平成10年4月中旬より、発熱、右胸痛があり、近医を受診して
いたが、症状がつずいており、徳山医師会病院に入院した。
入院時現症 :身長157cm、体重48kg、体温37度、胸部聴診で
右背部に呼吸音減弱、打診濁音あり。
検査所見:白血球7100/mm3, Hgb11.8d/dl,Hct
34.5%,T−p6.2g/dl,赤沈40/1時間、76/2時間
CRP2.0mg/dl
胸部X線写真:
右横隔膜が上昇しているように見えるが、肺下胸水の貯留による
胸膜炎と診断した。
胸腔穿刺:
右後腋下線第7肋間で胸腔穿刺を行なった。黄色混濁胸水830ml
排液し、一部を検査に提出した。
胸水の性状:
比重 1.030、蛋白4.2g/dl,リバルタ(+)
細菌培養陰性、細胞診断 クラスII,
ヒアルロンサン 79000ng/ml*
TPA 4000U/L(70以下)*
CA15−3 36U/ml(30以下)*
CA125 1710U/ml(35以下)*
SLX 139U/ml(38以下)*
CEA 0.5ng/ml(2.5以下)
SCC抗原 2.2ng/ml(1.5以下)
ADA 50.3IU/L
ヒアルロンサン、TPA,CA125、SLXの著しい異常値を認めた。
末梢血液腫瘍マーカー:
ヒアルロンサン 32ng/ml
CA125 236U/ml
SXL 46U/ml
TPA 50.9U/L
臨症経過:
胸水細胞診で胸水中細胞がリンパ球が多数検出されていること、胸水
ADAが上昇していることから結核性胸膜炎と診断し、SM,INH,
RFPの3者療法を開始した。Meigus症侯群も否定できず、
婦人科の診察も受けたが、異常なしと診断された。発熱、右胸痛は
次第に改善し、胸部X線写真でも胸水の減少を認めた。
胸水6週培養で1コロニーの抗酸菌を検出した。
コメント:
結核性胸膜炎にともなって血清および胸水中CA125が上昇するという
ことは報告されている。
広瀬;両側胸水と腹水が貯留し、血清および胸水中のCA125高値を示した結核性
胸腹膜炎の1例 日胸疾会誌35(2)196、1997
田口:血中CA125が高値を示した、結核性胸腹膜炎、回腸結核、性器結核合併の
1症例 日胸:56:10、870、1997
CA125はヒト卵巣嚢胞腺癌患者の腹水から得られた腫瘍細胞を抗原
として作製されたモノクロナール抗体にて認識される抗原であるが、
最近では卵巣以外の多くの悪性腫瘍で上昇することが知られている。
胸水、腹水中のCA125は良悪性に関係なく上昇するため鑑別に役
立たないとの報告もある。体腔液貯留で体腔上皮に刺激がかかると分泌
されることがCA125上昇の機序と考えられている。
胸水中ヒアルロンサンは、悪性胸膜中皮腫のほか種々の疾患で上昇すると
報告があり、特異性はないと考えられる。TPAが上昇した結核性胸膜炎
の報告はないようであるが、さらに検討するよていである。