症例:87歳、女性
現病歴:老人性痴呆で入院中であったが、呼吸状態悪化、血圧
低下があり、紹介され徳山医師会病院に入院した。
入院時現症:血圧120/64、脈拍100/分、呼吸数30/分
胸部:呼吸音亢進
検査所見:血液ガス(R.A.):PaO2 51.5mmHg, PaCO2 23.4mmHg, pH 7.448
経過:入院後より、呼吸状態はさらに悪化した。血液ガス(O23L/min)
PaO2 47.8mmHg, PaCO2 24.4mmHg, pH 7.452
胸部X線写真:
心臓陰影拡大、右横隔膜上昇を認める。
心臓エコー検査:
normal systolic performance, small sized LV .
RVによるLV圧排変形あり。腱索断列または右室内血栓。
TR III 以上。
その後、呼吸状態はさらに悪化し、挿管し人工呼吸を
行なうが状態は改善せず永眠した。
コメント:
肺血栓症は、通常は急激に発症して呼吸困難をきたす急性
肺血栓症を指して用いられる。今回の患者さんはこの定義
に合致すると考えられる。入院時、呼吸状態が悪く、血液
ガス値では著しい低酸素血症、低炭酸ガス値症を認めた。
酸素吸入をしても、この血液ガス値異常はほとんど改善さ
れなかった。胸部X線写真では、心臓陰影の拡大と右横隔
膜の上昇を認めた。この時点で、施行した心臓エコー検査
では、右室の拡張の他に右室内に異常エコーがあり、腱索
断裂によるエコーも考えられた。
しかし、心電図所見、胸部X線写真で肺野に著変がないに
かかわらず著しい血液ガス値異常を認めたことより、肺
血栓症と診断した。患者さんは、急激な経過をとって死亡
した。
病理解剖の結果、右室内の異常エコーは血栓エコーである
ことが判明した。右室内に形成された血栓が、つぎつぎに
肺動脈に塞栓を生じたと考えられた。病理所見の写真で
示したように、右肺は主肺動脈がほとんど血栓で閉塞され
ていた。この血栓は肺動脈のほとんどの分枝にそって血栓
が認められた。左肺動脈にも血栓が存在した。右室に
なぜ血栓が形成されたが疑問であるが、右室梗塞などの
壁運動異常が原因となった可能性があると考えられるが、
ミクロ所見はこれから検索の予定である。